飯舘村放射能エコロジー研究会 Iitate-mura Society for Radiocology (IISORA)

飯舘村放射能エコロジー研究会の発足にあたって

昨年3月11日の地震・津波をきっかけとして発生した福島第1原発事故は、3つの原子炉のメルトダウンという、原発で起こりうる最悪の事態に至り、大量の放射能が大気と海に放出された。最も大量に放射能が放出された3月15日の午後、放射能を含む大気は、折からの北西方向への風によって、阿武隈山地をはい上がって飯舘村の方向へ流れた。飯舘村は、福島第1原発から30~45kmに位置し、農業を中心に原発とは縁のない村作りを進めてきた村である。放射能を含む大気が飯舘村にさしかかった15日の夕刻、たまたま降雪と重なったことが飯舘村に大量の放射能沈着をもたらすことになった。以来、飯舘村の人々の生活は一変してしまった。飯舘村の人にとって、突然に空から降ってきた放射能汚染は、まったく“不条理”な災難だった。
飯舘村放射能エコロジー研究会(IISORA: Iitate-mura Society for Radioecology)は、突然の放射能汚染、放射線被曝、避難生活、生業喪失といった事態が、飯舘村の人々や自然に何をもたらし、これから何をもたらすのか、村人の生活再建はどうあるべきか、調べ、記録し、分析し、飯舘村の人々が被った“不条理”を地元の人々とともに社会に発信しようとする研究者やジャーナリスト、ならびにそうした活動の協力者の集まりである。日本大学の糸長は、住民参画の村づくりのプランニングを通じ、福島事故の20年以上前から飯舘村に関わって来た。環境ジャーナリストの小澤も、福島事故以前から、木質チップボイラー導入など飯舘村での自然エネルギー利用に関わってきた。京都大学の今中は、事故以来、飯舘村の放射能汚染調査を行っている。チェルノブイリ事故の経験が明らかにしているように、大規模原子力災害にともなう被害は、放射能汚染、放射線被曝といった原子力特有の問題に限らず、個人生活や地域社会の破壊、地域経済の破壊、さらには生態系の破壊といった問題にまで及んでくる。事故被害の全体像を明らかにするには、さまざまな分野の専門家による共同作業が不可欠である。IISORAは、飯舘村調査を通じて知り合ったもの同士が、そのような共同作業を行う場として2012年8月に発足した。“事務局”といったものを必要とするような集まりではなく、とりあえず、糸長、小澤、今中の3人が世話人を務め、今後、シンポジウムやホームページを通じて、それぞれの活動の成果について情報発信を行うつもりでいる。

2012年9月
IISORA世話人一同

研究会発足までの経緯

2011年3月
11日 東北地方太平洋沖地震発生、福島第一原発は外部電源・非常用電源を喪失し冷却不能に
12日 1号機水素爆発
14日 3号機水素爆発
15日 2号機格納容器損傷。4号機水素爆発。2号機のベント・損傷に伴う放射能雲が北西方面へ向かう。夕方から夜にかけて浪江町・飯舘村付近で雨と雪により大量にフォールアウト。
16日 飯舘村後方支援チーム立ち上げ(糸長、浦上、小澤ほか)
21日 厚労省、飯舘村内の簡易水道から最高965Bq/Lのヨウ素131を検出と発表
23日 浦上が支援のために現地入り
25日 文科省の土壌調査で飯舘村にチェルノブイリの強制移住並み汚染と新聞報道
28~29日 飯舘村周辺放射能汚染調査(今中、遠藤、菅井、浦上、小澤)

2011年4月
4日 放射能汚染調査の暫定報告「3月28 日と29日にかけて飯舘村周辺において実施した放射線サーベイ活動の暫定報告」を発表
11日 飯舘全村を含む30km圏外の高濃度汚染地域が「計画的避難区域」に指定されることを国が公表
13日 院内セミナーで飯舘村の汚染状況報告と政府への提案を発表(今中・糸長)
22日 国が飯舘村などを計画的避難区域に指定

2011年6月
5日 飯舘村で3月の調査報告会を実施(今中、遠藤、小澤)

2011年10月
5~6日 半年後の線量調査並びに土壌サンプリングを実施(今中、遠藤、菅井、林、小澤)
10月5日 福島市内でシンポジウム「飯舘村の「今」と「これから」~村民にとっての復興とは~」実施(発表者:今中、遠藤、菅井、糸長)

2012年1月・2月
30~1日 スウェーデン・ヨーテボリ大学マーチン・トンデル博士、ウプサラ大学ロベルト・ウェリンダー博士、来福。31日に福島市内で講演会とシンポジウム実施(NPO法人エコロジーアーキスケープ、国際環境NGO FoE Japan共催)

2012年3月
26~28日 一年後の線量調査並びに土壌サンプリングなどを実施(今中、遠藤、菅井、小宮山、川野、山本、那須、石田、小澤)

2012年5月
6日 飯舘村放射能エコロジー研究会準備会(東京) 7月8~11日 飯舘村小宮地区で第1回K/R実験、第1回勉強会および情報交換会

2012年8月
12~15日 第2回K/R実験、第2回勉強会、飯舘村放射能エコロジー研究会(IISORA)発足

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